ウラジオストック発モスクワ行きロシア号2等車

シベリア鉄道、ヒマのつぶし方



いちばんよく食らう質問。
「ウラジオストックからモスクワまでって何日かかるの??」
「6泊7日」
「エェェェェェッッッッ!!!」
となる。

その次によく食らう質問。
「そんな長い間なにしてんのぉ??」

一つ目の答は9200キロという距離から考えるとそんなものだろう。二つ目の答は....うぅぅぅむ、一体何をしてたのか? たしかにヒマではあった。が、死にそうにヒマというわけではなかった。
何日も続けて列車に乗っていると時間の感覚は全く無くなり、寝たいときに寝て自然に目がさめて起きる。腹が減ったら食う。あとはウダウダゴロゴロ。本も3冊ほど持って来てはいたがイルクーツクあたりまでには読み終わっていた。

ひとつヒマつぶしとして思いつくのはロシア人民はみな話好きだったことだ。並みの話好きではなかった。はっきり言ってうるさいくらいだった。少しぐらいだと手振り身振りと知っているいくつかのロシア語単語でコミュニケーションはとれるが、それが1時間2時間と続くのである。英語はなすときの10倍くらい、日本語を話すときの20倍くらい疲れる。疲れてきても向こうは話すのをやめないから「ちょっとトイレ」とか「疲れたから寝る」(これはホント)とか言い訳をして逃げ出すのであった。ろくなこと話してるわけぢャないんだけどね。

イルクーツクまでは母親と娘一人の親子連れが同室で、イルクーツクからモスクワの手前まではセルゲイという一見目つきが鋭く髪は5分刈りヤーサン風こわもてロシアのオッサンが同室だった。セルゲイの他にも名前は忘れたが(というより、あまり日本人にとってメジャーな名前じゃなかったので覚えられなかっただけ)、乗ったり降りたり何人かが同室だった。そのだれもがみんなロシア語が通じないのはわかっているのに一生懸命話し掛けてくるのである。

中でもこわもてセルゲイは熱心かつ好奇心丸出しだった。
あるとき文庫本を読んでいると覗き込んで来て「なぜ字が縦に並んでいるのだ?」と聞いてきた(もちろんロシア語と手振り身振りで)。そんなことを聞かれても困る。テキトーに「昔からそうだ」的に言ってやると、それでその場は納得したらしいのだが、後日「歩き方」を見てるとまた覗きこんできて、今度は「こないだのは縦書きだったのに、これはなぜ横書きなのだ??」と聞いてきた。見てわかるかんたんな日本語を縦書きと横書きにして「ほらね、いっしょ」と見せてやってもいまいち納得していないようだった。

また列車が駅に着くたびに「ここはノボシビルスクだ」とか「次ぎに停まるのはチュメニだ」と何かれと世話を焼いてくれた。列車がボルガ川を渡るときなどは何10キロも手前から「撮れ撮れ」とうるさくカメラを準備させ、川が近づいてくると、窓が汚れていてキレイに撮れないからとわざわざ窓をヨッコラショと開けてくれたのである。

なんかインツーリストのロシア・オババとはエライ違いである。

それから3番目によく食らう質問。
「お風呂はどうするの?」
毎日最低でもシャワーがないと困るような人はシベリア鉄道なんぞに乗ったりしません(キッパリ!)。







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